子育てを助ける趣味の存在
こんにちは、いったです。
みなさんは、なにか趣味はありますか?
この質問、苦手な人も多いと思います。
Do you have any hobbies? ― No, I don't.
という流れは、ほとんどの人が経験するでしょう。
しかし、子育て中の(ここでは3歳児の子供を持つ)お母さんを対象に行った研究では、子育てと趣味の間には関連があることがわかりました。
趣味があると育児不安が少ない
調査に参加した母親のうち、趣味がある人は約半数でした。趣味がある母親たちは、ない母親たちに比べて、
1.育児に自信が持てない
2.母親として不適切と感じる
3.育児についていろいろ心配なことがある
4.子どものことでどうしたらよいかわからない
5.子育てに困難を感じる
という5つの項目で得点が低かったんです。
簡単に言うと趣味がある母親は子育ての不安が少ないということです。
趣味を作らないとダメ?
趣味をつくれって言われたって興味のあるものないし、時間もないし…
そう思われる方もいますよね?
実はこの研究に参加した、趣味がないと答えた母親に趣味がない理由を尋ねたところ
「時間がない」「興味があるものがない」「経済的に余裕がない」という回答が多かったのです。
さらに、趣味にしたいものを尋ねたところ、「ヨガ」「手芸」「読書」という、集中力が必要なものが多く挙げられました。
一方、趣味があると答えた母親に、趣味の内容について尋ねたところ
「ショッピング」「映画鑑賞」「テレビ・ドラマ鑑賞」と答える方が多かったのです。
つまり、趣味の内容が重要なのではなく、趣味として行っているかということが重要なのです。
実際に、趣味があると答えた母親たちは、大きな目的があって行っているのではなく「楽しむため」「気分転換のため」に行っているようです。
どんな趣味がいい?
では、今から始めるならどんな趣味がいいのでしょうか。
それは大きく2つの要素を持ったものがいいでしょう。
1.集中して行う必要がない
2.他者と共有できるもの
集中力が必要とされる「ヨガ」や「手芸」は、子育て中の母親には難しいこともあり、かえってストレスが溜まってしまうかもしれません。
また、他者と共有できる趣味を持つことでコミュニティを広げることができます。
実際に、趣味がある母親はない母親に比べて、子育て情報源がある割合が高いという結果が出ています。
趣味を通じたコミュニティで、子育て情報を交換し合うことができるかもしれません。
ただし、趣味を持つには多少なりとも父親と子育てを分担する必要があるでしょう。
説得に使えるように、今回は参考にした論文を載せておきます。
ぜひ気分転換のできる、自分に合った趣味を見つけてみてください。
参考文献
大浦 早智・小西 清美・長嶺 絵里子(2019). A市における3歳児を持つ母親の趣味と子育て環境についての検討 名桜大学総合研究,28,133-140。
ちなみに…旦那さんに子育てを手伝ってもらう方法の提案などについて、動画を出しています。よろしければご覧ください。
子育ての疲れにはアロマが効く
こんにちは、いったです。
子育てをしていると、どうしても身体的・精神的にストレスがたまることってありますよね。
だからといって、外に出て運動したりカラオケに行ったりする余裕はなかなかありません。
今回は、そんなときにはアロマがいいよっていう話です。
子育て中お母さんへのアロマテラピーの効果
神戸常磐大学の研究では、子育て中の母親がアロマハンドマッサージを受けると、ストレスや緊張、不安などが減少することが分かりました。
唾液やテストのようなものを用いて分析した結果なので、確かに心を落ち着かせる効果があるようです。
しかし、そもそもアロマはなぜ効くのでしょうか。
アロマが効く理由
アロマテラピーがその名の通りセラピーとして機能する理由は、おもにその香りにあります。
鼻から入ったアロマの香りは、嗅覚を司っている器官によって電気信号に変換され、脳の視床下部へと到達します。視床下部は自律神経や体温調節、ストレス応答、摂食行動、睡眠覚醒など、さまざまな生理機能を協調して管理しています。
アロマの香りは視床下部にはたらきかけ、自律神経やホルモンバランスを整えることができます。すると副交感神経が優位になり、ストレスや体の緊張がほぐれていくのです。
つまり、研究で行われたような、ハンドマッサージを行わなくても十分にアロマの効果は得られるということです。
もちろん皮膚から効果を得たり、肺から血液を通して全身に送られるルートもありますが、香りに因るものがメインなんです。
お母さんにおススメのアロマ
紹介した研究で使われたアロマを紹介します。ここに挙げるものは授乳中の方にも安全性が高いとされているものですが、気になる方は医師やアロマの専門サイトなどをご確認ください。
・真正ラベンダー
シソ科の植物で、学名に入っているofficinalisには”薬用の”という意味があります。ラベンダー精油は刺激が少ないため、世代を選ばず使いやすいという特徴があります。睡眠中の芳香浴ではすっきりとした目覚めが得られ、短い時間でも気分の落ち込みが減少したという報告もあるようです。また、トリートメントによりストレスを和らげ、免疫力を高める効果もあるようです。
・オレンジスイート
ミカン科の植物で、いわゆるシトラスの香りなどと呼ばれているものです。甘くみずみずしい香りが特徴で、不安軽減や胃腸の不調にも効果があったとの報告もあります。またリラックス効果だけではなく、”やる気”や”きびきび動く”気持ちも引き出してくれるようです。その他、高齢者のうつ病に対して大きな影響がある可能性があるという研究や、面白いものには小学生がこの香りを感じてから100マス計算を行うと計算ミスが減る、というものもあります。
・ゼラニウム
フクロソウ科の植物で、ローズオキサイドという成分を含んでいます。その名の通りローズのような香りで、古くから香水などに利用されていました。バランスの精油といわれることもあり、ホルモンや皮脂などの身体面と精神的なバランスの両方を整える効果があるようです。また、唾液中のエストロゲン(女性ホルモンの一つ)濃度が上昇したという研究もありますが、女性ホルモンのコントロールはストレスの軽減が大事とされているので、その効果かもしれません。いずれにせよ、体の中のバランスを整えてくれるアロマといえそうです。
アロマのある暮らしに
仮にアロマに効果がなかったとしても、その香りの良さは日常生活に癒しや潤いを与えることは間違いないでしょう。
小さいころに、アロマがたいてあるおうちにおじゃました時は、少しお行儀よく遊んだのを覚えています。もしかしたら、お母さんだけでなく子どもや旦那さんにも効果があるかもしれません。
色々な香りを試し、自分に合うアロマを探してみてはいかがでしょうか。
ぜひいろいろなアロマとの出会いをお楽しみください。
親の役割って?(後編)
こんにちは、いったです。
みなさんは、子育てについての意見がほかの人と合わないとき、ありませんか?
親だったり親戚だったり、些細なことであれば奥さんや旦那さんが一番多いかもしれません。
でも実は、そもそも子育ての動機が違っているのではないか、という説があります。
今回は父親と母親の役割意識の違いについてお話しします。
母親の子育て動機
家族社会学では、お母さんは「母親規範」という考え方が主流なようです。
母親規範とは簡単に言うと、「理想の母親像に則って母親をやる」ということです。
例えば
・1970年代
3歳児神話(子供が3歳になるまでは母親は子育てに専念すべきであるという考え方)が母親に影響を与え、母性を強調する時代でした。
・1990年代~2000年代
専業主婦家庭と共働き家庭で、親役割が二分化されていました。
このように時代によっても違い、文化差や地域差にも影響を受けるというものです。
最新の子育て情報に対する感度が高い、とも言えますね。
父親の子育て動機
心理学では、父親の子育ては「性別役割分業意識」に基づいている、とされています。
つまり、”父親たるもの” という考え方がある、ということです。
もちろん、確固たるものがある人はそんなに多くないと思いますが、「それは○○の仕事だろ~」みたいな思いがある人はいるような気がしますよね?
一方、家族社会学では、父親の育児の目的は
1.楽しむため、2.自己実現のため、3.妻の負担軽減のため、4.子どもの発達のため
と分析されています。
やっぱりこちらのほうがしっくりきますね。
さらに、食事や排せつなどの子供の日常への補助よりも遊びへの関与が多いことから、要素(世話・社会化・交流・扶養・家事)によって動機が異なるかもしれないとの研究もあります。
子育てを一緒に考えるために
こんな風に、同じ「親」でも、その意識や考え方は少し異なっていることが分かりました。
意見が食い違う理由、なんとなくわかったような気がしますよね。
さらに、悲しいことに、父親の「世話」の関与が増加すると、母親が父親の育児関与を阻害することが多くなるという研究もあります。
適度に、お互いにとって良い状態を保ちながら子育てができる方法を考えていきたいですね。
ちなみに…この辺のテーマについて動画をあげたりしています。
よろしければこちらからどうぞ
親の役割って?(前編)
こんにちは、いったです。
私は最近、子育て世代のお母さんお父さんの情報をSNSを使って集めています。
そんな時にふと思ったことがあります。
あれ?人によって「子育て」って言葉の使い方が違うな?
子育てとはなにか
みなさんありませんか?
自称イクメンが、「今日は子どもとキャンプに行きました。」といってSNSに写真をあげる姿を見て、
遊んでるだけじゃねえか
といいそうになってしまったこと。
もちろん親子で遊びに出かけることは何も悪いことはありません。
むしろお母さんは助かる部分もあるでしょう。でもそこじゃないんですよね。
「今日は子育ては俺に任せろ感」に違和感を覚えるんです。
この違和感の正体を探るべく、心理学の子育ての研究を探ったところ面白いことが分かりました。
心理学では子育て=子供に関すること
心理学、特に生涯発達を研究している発達心理学の分野では、子育て=子供に関することと考えて研究が進められていました。
なぜかというと、発達心理学での子育ては子ども目線で考えられているからなんです。
もう少し詳しく言うと、親には2つの役割があるとされています。
1.愛着の対象としての親
1は簡単に言ってしまえば甘える対象ということです。生まれたばかりから生後半年くらいまでは、親の役割はほとんどこの役割とされていました。
2.社会化促進係としての親
2は言葉を覚えたり体が自由に動かせるようになってきた子供に対して、褒めたり叱ったりすることで社会性を学んでもらう手伝いをするような役割です。ややストレスがたまることが多くなるのもこの辺からのように思います。
たしかにこれらの役割も必要でしょう。しかしやはり大事な視点が欠けているとは思いませんか?
家族社会学の考え方
社会学の視点で家族を考える、家族社会学の子育ての考え方は、発達心理学の考え方とはかなり異なります。
家族社会学では(私の調べによると)、親の役割を5つに分けています。
1.世話、 2.社会化、 3.交流、 4.家事、 5.扶養
4の家事と5の扶養は、先ほどの発達心理学の視点にはなかったものです。
つまり、日常の家事や洗濯、さらに生計を立てるための仕事までもが、子育ての一部であると考えられているということです。
よくよく考えてみれば、家族の中で誰も家事と仕事をしていない状態では、子育てはできませんよね?
心理学が悪いわけではない
ここまで発達心理学を悪者のように書いてきましたが、もちろん発達心理学には発達を専門に研究している強みがあります。今、幼児教育や学校教育で行われていることは、発達心理学の研究成果無しではありえません。
ただ、「正しい」ことをぶつけてくる発達心理学は、ドストレートに現実と戦うお母さんお父さんにはちょいと手厳しいときがあります。いわゆる「入ってこない」というやつです。
そんなときは、社会学系の情報を集めてみてもよいかもしれません。きっと同じ目線で考えてくれていると思います。
後編では、テーマ別,性別の親世代の葛藤を見てきたいと思います。
ちなみに…この辺のテーマについてYouTubeで動画を出したりしています。
よろしければこちらからどうぞ。
【子供の成長】相手の気持ちになると絵を変える?
こんにちは、いったです。
突然ですが、「相手の気持ちを考えてごらん」というセリフを言ったり聞いたりしたことはありませんか?
子供は自己中心性が大人より強いので、ついついよく使われるセリフだと思います。
しかし最新の研究によると、未就学児でも、自発的に相手の気持ちを考えることができることが明らかになっています。
今回紹介する研究は絵を用いたものです。
絵を描くこと=伝えること
子どもはよく絵を描きます。
今ではほとんど絵を描かない方でも、小さい頃はよく描いていた気がするということがありませんか?
久しぶりに実家に帰ると、身に覚えがないような絵をお母さんが大切にとっておいている、なんてこともよくあります。
ではなぜ絵を描くのでしょうか?
子どもにとって絵を描くことは遊びの一つでもありながら、意思表現の一つでもあります。絵を描くより前の子どもたちでは、指差しをよく使います。「僕はこれを見てるよ!お母さんもみてる?」という意味を持っています。
絵も同じで、「僕はこれに興味があるよ!」という意思表示なのです。だから、子どもたちは絵が伝わらないと困ってしまいます。
他者に伝える
伝えたいものが伝えられないとき、子どもたちはどうするのでしょう。
最新の研究では、5歳程度の子どもたちでは、おおよその場合相手の気持ちを汲み取って自分の表現を変えることができることが明らかになっています。
具体的には、絵を描いてプレゼントした際、受け取った相手が異なった解釈をすると、特徴を書き加えたりより形を近づけたりして、相手にわかってもらおうすることが分かっています。
自分がこう思うからというものではなく、「ここが丸すぎたから間違っちゃったんだと思う」というように、相手の解釈の原因を考えることができるのです。
”相手の気持ちになる”をどう伝えますか?
絵を調整すればゲームが続けられる、という状況を作った別の研究では、先ほど紹介した研究より正確に修正しようという姿勢が見られることも分かっています。
これはいわゆるご褒美と罰を用いた強制的な方法です。
そんなことをしなくても、伝え方ひとつで相手の気持ちを考えることができるのです。
例えば絵を描いているときに、何を描いているのかを尋ねたうえで「上手だね。あ、ここをこんな風に見たらこの絵は○○にも見えるね」などと伝えてあげることで、気持ちを汲み取って新しい絵を描いてくれるかもしれません。
また、先ほどの研究では5歳児の中でも絵の修正をしない子どももいることがわかっています。
子どもの発達は本当に人それぞれです。今、目の前に現れているものだけでなく、いつ現れるか、何が現れないかもすべて個性・特性なのです。
子どもの一挙手一投足に、フラットな興味を持って接してみてください。
そこには、こちらのほうが気づかされることがたくさんあるかもしれません。
参考文献
山田 真世(2014). 幼児期の描画における意図の発達――命名行為の変化の検討 発達心理学研究, 25(1), 47-57.
プロフィール
ご挨拶
はじめまして,運営者の「いった」と申します。
このブログでは,子どもの不思議についてや心理学の最新の情報,子育て情報などを発信していきます。
合間に,時事ネタや思ったこと,メモ等もはさんでいこうかなと思っています。
中の人ってどんな人?
心理学を専攻している学生です。スクールカウンセラーを目指しながら,子どもや家庭,夫婦関係などについての情報を集めています。
面白い論文がたくさんあるのに世に出ないんだろうなと思うことが多かったので,そういったものを噛み砕いてお届けします。
アルバイト
中学生メインの塾講師のアルバイトを5年続けています。
あとは某県の県立模試解説に登場していたり,教育ファシリテーションをする企業のインターンを1年ほど経験したりしました。
今何してるの?
現在は,YouTubeで子育てに関する動画を配信していたり,絵本の制作をしたりしています。
取り上げて欲しいテーマなどがありましたらコメントいただけたら嬉しいです!